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統合報告フレームワークについて
いつもオレンジ社のブログをご覧いただき、ありがとうございます。
オレンジ社のある市ヶ谷は桜の名所が多く、先週はお花見に訪れた人達でいつもより賑わっていました。
さて、今回は統合報告書に馴染みのない方への入り口として、統合報告書を作成する際のガイドラインのひとつである「国際統合報告フレームワーク」に触れてみます。
1.「国際統合報告フレームワーク」
統合報告書(IR)は、世界各国のたくさんの企業が発行するものですから、制作におけるガイドラインがいくつかあります。「国際統合報告フレームワーク」はそのガイドラインのひとつで、国際統合報告評議会(IIRC: International Integrated Reporting Council)という非営利組織が2013年に公表しました。
統合報告書がつくられるようになったのは、ここ15~20年ぐらいのことですが、2013年にこのような統合報告における明確なガイドラインが出たことで、統合報告書を発行する企業が増えました。今では、世界70か国のおよそ2500企業が統合報告書を発行しています。
なお、「国際統合報告フレームワーク」は2021年1月19日に改定されました。
2. IIRCとは
国際統合報告フレームワークは、国際統合報告評議会(以下、IIRC)という団体が作りました。IIRCは、世界的な金融危機を受けて、このような金融システムの崩壊が再び起こるリスクを軽減するための解決策が必要という考えのもと、2010年7月にイギリスで設立されました。GRI(Global Reporting Initiative)という、サステナブルな投資報告のガイドラインを発行するオランダの非政府団体を母体に、規制当局、投資家、企業、会計士団体、基準設定者、学者、NGO などによって構成されています。日本からは日本取引所グループ(JPX)や日本公認会計士協会(JICPA)などが参加しています。
IIRCは、国際的な基準である「統合報告」のフレームワークを通じて、財政を安定させながら持続可能な開発ができるよう支援し「あらゆる人々の繁栄を促し、地球を保護すること」を目的としています。
そのために、
- 統合思考と統合報告を促進するための「指導原則」と「内容要素」を確立すること
- このフレームワークで、統合報告における基本的な概念を説明すること
をめざしました。
企業が、統合思考にもとづき、効率よく、よりまとまりのある情報公開をして、投資家や一般の方が得られる情報の質を改善することによって、社会が良くなれば・・・といったところでしょうか。
3. フレームワークの基本構成と2021年の改訂内容
国際統合報告フレームワークは2パートから成ります。パート1が7つの指導原則、パート2が8つの内容要素です。
IIRCは2021年1月19日(火)、より効果的な統合報告を促進するために「国際統合報告フレームワーク」の改訂版(以下「2021版」と呼ぶ)を発表しました。IIRCの
【主な変更点】
- ガバナンス責任者が統合報告書に対しての責任を表明することを求められるようになった。ガバナンス責任者は「組織の戦略的方向性、組織の説明責任及びスチュワードシップの順守状況を監督する責任を有する個人又は組織」と定義されており、取締役会などが該当すると考えられる。
- アウトプットとアウトカムの違いが明確化された。自動車メーカーを例にすると、アウトプットは自動車。アウトカムは、正と負の両方があり、【正】は顧客の利便性、地方税納税による地域貢献、【負】は交通事故、大気汚染。このように、アウトプットからアウトカム(社会的影響)が生み出され、結果としてアウトカムが資本に影響していく。
- 統合報告書作成・表示プロセスの開示が推奨されるようになった。
- 価値創造プロセスにおいて、価値の創造、そして価値の保全や毀損により重きが置かれるようになった。事業活動がアウトカムに直接影響するようになった。(図を参照)
(図)価値が創造、保全又は毀損されるプロセス
出典:https://www.integratedreporting.org
具体的な変更箇所は、IIRCによる新旧対照表(英語版)で確認できます。
▸ 2013年版と2021版の新旧対照表(出典:https://www.integratedreporting.org)
4. IFRSへの統合
2021年6月、IIRCはSASB(5.を参照)と合併しValue Reporting Foundation(VRF)になりました。このVRFはさらに、2022年8月1日、国際会計基準(IFRS)財団に統合されました。いろいろな団体があって頭がこんがらがってきますが、より一貫性のある包括的な報告をめざしての統合だということです。
出典:https://www.sasb.org/
5. 関係団体、統合報告書やサステナビリティ報告書のガイドラインなどへのリンク
● IFRS財団
上記のとおり、IIRS他が統合総合された財団です。2021年11月、傘下で国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board: ISSB)を設立し、2022年3月、ESG情報の国際的な開示基準の公開草案を公表しました。会計基準設定機関である国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board: IASB)もIFRS財団に属します。
● 価値報告財団(VRF)
IIRCと、下記のSASBが合併してできた価値報告財団(Value Reporting Foundation: VRF)。IFRSに統合されました。下記ホームページのトップに大きく書いてあります。
URL: https://www.valuereportingfoundation.org/
● 気候変動開示基準委員会(CDSB)
気候変動開示基準委員会(Climate Disclosure Standards Board: CDSB)。IFRSに統合された。
URL: https://www.ifrs.org/content/dam/ifrs/groups/cdsb/cdsb-framework-2022.pdf
● 価値協創のための統合的開⽰・対話ガイダンス
日本向けのガイダンスです。経済産業省に設置された「持続的成⻑に向けた⻑期投資(ESG・無形資産投資)研究会」における検討に基づいて策定されたものです。
URL: https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/Guidance.pdf
● 気候関連財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)
公式ウェブサイト(英語)
URL: https://www.fsb-tcfd.org/
提言(日本語)
URL: https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2020/10/TCFD_Final_Report_Japanese.pdf
● GRIスタンダード
GRIスタンダードは、GRI(Global Reporting Initiative)が提供している、組織が経済、環境、社会に与えるさまざまなインパクトについて一般の人々に情報提供する際の、国際的なベストプラクティスを反映している規準です。
URL: https://www.globalreporting.org/
● SASBスタンダード
SASB(サスビー)と呼ばれる、サステナビリティ会計基準審議会(Sustainability Accounting Standards Board)のが定めた会計・開示基準です。
いかがでしたでしょうか。最後までお読みいただきありがとうございます。
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