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IR/CSRレポート制作を成功させる「編集力」とは -印刷版(PDF版)レポートに必要なロジックとストーリー構築-
私たちがお手伝いしている企業の発行するレポート制作。
統合報告書、アニュアルレポート 、サステナビリティレポート、CSRレポート、企業名を冠した独自の名称のもの・・・と多岐に渡りますが、
作業としては大まかに立案(企画・構成)→素材集め(データ収集・原稿作成・写真撮影)→DTP(デザイン・校正)というプロセスを経て出来上がる点は共通しています。
しかしながら、クライアントの担当範囲、委託業社の持つ機能も得意不得意があったりと、案外プロジェクトごとに役割分担の構図は多様です。
私はIR業界で20年以上デザイナーとして制作に携わってきましたが、近年ますます役割分担の多様化が進んでいるように感じます。
今回は、どういう体制で臨むにしても良質なレポートを実現させる上で必要な「編集」という機能にフォーカスを当て、その重要性について述べたいと思います。
必要不可欠なのにおざなりにされがちな「編集」
あなたが企業のレポート制作担当だと仮定しましょう。
一緒にものづくりするパートナーとして選びたいのは制作会社ですか?印刷会社ですか?それともコンサル会社でしょうか?
・洗練された魅力のある企画とデザインで自社ブランドを訴求したい
・実績豊富なパートナーと組んで納品まで安心できる体制で臨みたい
・緻密な企業分析をベースにしっかりしたものを機関投資家向けに作りたい
等々、ターゲットをどこに置くかで求めるニーズも変わり、発注先の選定も異なってくることと思います。
目的に見合った成果物が出来上がればそれが正解であり「良いレポート」の答えはひとつではありません。
ただし、いかなるゴール設定をするにしても良いレポートを制作するためには、的確な「編集」が必要となります。
特にレポートが印刷物(PDF版を含む)である場合、ページ物という出版形態である以上「編集」は必要不可欠なタスクなのですが、役割の輪郭がハッキリと見えづらいせいか企業レポートの制作現場ではおざなりにされるケースが散見され、もったいない結果になることが少なくないように感じられます。
「なんとなく編集」でも形としてのレポート制作はできてしまう怖さ
一般的にレポートを発行しようとする際、まずは掲載する要素をすべて俎上に載せることから始めることと思います。
前年版で網羅できていなかった情報を追加したり、不必要になった情報は削除したり、とアップデートをします。
特集は何にしようかな?
目下全社をあげて注力している新規事業にしよう!
などと決めていきます。
全体的なページ構成が決まると、社内の担当部署に原稿作成と写真支給の依頼をし、自ら担当するパートについても執筆したり撮影したりします。
素材が集まったところから順次デザインレイアウトへと移行し、校正のやり取りを経て校了、出来上がりました。
・・・
さて、果たしてこれでいいレポートに仕上がったでしょうか?
確かに悪くはないかもしれませんが、「編集目線」が弱いと訴求力の低いつまらないレポートになっているはずです。
つまり、専門の編集者不在であってもレポート制作ができてしまう怖さがあるのです。
では、訴求力のある良いレポートを制作するために必要な「編集」とは、具体的にどのようなタスクになるのでしょうか?
【1】企画段階での編集タスク
~「編集」とは組み立てる技術。より伝わるかたちへ ~
「ターゲット読者層に対して、重要な情報を確実に、伝えたいイメージとともに印象に残るかたちで」届けるためには、流行っている紋切り型の構成に要素を当てはめるだけでは不十分です。
また、伝える側の論理だけに固執していては、興味をそそられない内向きのツールに陥ってしまいます。
まずは企画が固まった段階でいま一度読者の立場に立って俯瞰してみましょう。
“会社の独自性を伝えるためには”、“経営戦略に説得力を持たせるためには”、“わかりづらい価値創造を見える化させるためには”、全く違うストーリーに組み替えたほうがいいかもしれません。
情報は文脈に沿って提示されてこそ意味を持ちます。
ただの情報の羅列になってしまわないように「ストーリー性」を意識しましょう。
また、エディトリアルデザインのテクニックを駆使して重要なことは重要であると印象付ける仕掛けも必要です。
徹頭徹尾、どのページを開いても同じような密度でテキストが埋め尽くされていたらどうでしょう?
読み進むスピードも冒頭から巻末まで同じ。よほど意欲のある読者でない限り、パラパラとページをめくって閉じてしまいます。
例えば雑誌を思い浮かべてみてください。
巻頭には大きな写真と見出しが躍り、グッと惹きつけられますね。
興味を持ってついつい入り込んでより詳細な情報へと読み進める仕掛けがされています。
レポートも同様に興味を持って読んでもらわないと意味がありません。
こういったことはデザイナーの仕事なのでは?と思われるかもしれませんが、デザイナーは表現することが仕事ですから、ページ構成を勝手に決められるポジションにありません。
かと言って企画者が独断で細部まで決めてしまっては、せっかく表現することに長けた編集者やデザイナーの技量を活かせないままです。
実際は企画者・編集者・デザイナーがアイデアを出し合いながら一緒になって「何を」「どのように」を考えることが大切です。
読者目線に立ったストーリーの組み立て・優先順位に適した各要素の表現方法とページへの落とし込みをしていくこと。
以上が、企画段階での編集タスクとなります。
【2】校正フェーズにおける編集タスク
~プロジェクトの最初から最後まで必要とされる「編集」~
そしていざ、企画もベージ構成も熟慮を重ねて出来上がり、社内の各部署に依頼した原稿も集まり校正フェーズになり、初校が仕上がってきました。
この段階でよく生じる問題に「原稿がうまくデザインにはまらない」ということがあります。
例えば、事業概況を「1事業ひと見開きにして同じフォーマットデザインにして比較しやすくする」という見せ方にした場合、ある事業は文字が多すぎて溢れ、ある事業は少なくてスカスカ、ということがよくあるのです。
ここぞとばかりに編集者の出番です。
過多な原稿は削減したり、別のページで記載可能ということであればトピックごと移動したりして調整を図ります。
不足原稿は増やせないか、他に写真はないかといった働きかけをします。
このあたりは発注側のご協力を必要としますが「良いレポートにしたい」という共通のゴールの為、動いていただけることが多いです。
この努力を惜しんで
「デザインで何とか処理して帳尻を合わせる(=溢れた文字は小さくして行間も詰めて入れ込み、スカスカのページは図表を大きくして埋める)」
というその場しのぎですませてしまうと、統一すべきところが統一できていない、苦労の跡がありありと透けて見える代物が出来上がってしまいます。
印刷物におけるこのレイアウト崩れは避けるべき致命的な現象なのですが、
Officeによるビジネス資料作成や、ウェブサイトを見慣れている現代においては軽んじられる傾向にあるように思います。
ビジネス資料であればページを増やしたいだけ増やせますし、そもそも高いデザイン性は求められません。
ウェブサイトであれば下にどんどんページを広げることで言いたいことを言い尽くせる柔軟性があります。
このような環境に慣れ親しんだ時代にあって、
印刷媒体は「言いたいことを言いたいだけ」ではなく、「限られたスペースの中でうまくまとめる」という重要な課題を内包しています。
ここでも読者目線になってみることが重要になります。
美しく印刷されたものなのに文字の大きさや行間スペースがページによってバラバラ。明らかに余白を埋めるためにそこだけ表が大きくなっている・・・
そのようなものを発行する企業にどういう印象を抱きますでしょうか?
反対に、ページの細部まで全てが美しくまとめられ統制が効いたレポートは、それを発行する企業に対してもまた好印象を与えるに違いありません。
様々な修正依頼に対して地道な作業や働きかけをして品質の維持に努めることは大変なことですが、
その努力が、美しくまとめられ統制の効いたレポートを作成し、発行した企業の信頼へとつながっていくものになるのです。
編集とはコミュニケーションそのものを考えること
ここまで見てきたように、編集とは「どういうロジックで、どういうストーリー展開で説明すべきか」という、コミュニケーションそのものを考える仕事です。
回遊性のあるウェブサイトとは異なり、印刷物は制作側の作り上げた順番でページを束ねた媒体なのでより一層ストーリー展開が重要となりますし、紙という限定されたスペースのなかで表現する必要もあり、時には思い切って「省く」という判断も必要です。
せっかくのすばらしい企業価値。その良さを伝えるためにはどのように説明するかを考え抜く必要があるのです。
冒頭でプロジェクトメンバーの役割分担が多様になってきたと冒頭で述べました。
今ではクライアントの会社が原稿を作成し、プロによる原稿の執筆や編集が無いということも珍しくはありません。
しかしながら、外部からの客観的な視点によるわかりやすさや読みやすさのための指摘、冊子全体を俯瞰したプロフェッショナルな視点が加われば、より一層魅力的なレポートになるのではないでしょうか?
もしもあなたのプロジェクトチームに編集者が不在でしたら、ぜひとも専門とする方を迎え入れてみてください。
以上、企画とデザインの狭間に埋もれて見えづらい、しかしレポート制作の成功においてとても重要な「編集」についてお伝えしました。
まとめ
- 訴求力のある良いレポートを制作するためには「編集力」が不可欠
- 企画段階では、読者目線に立ったストーリーの組み立て・優先順位に適した各要素の表現方法とページへの落とし込みが重要
- 地道な調整や働きかけといった校正フェーズの編集タスクによってレポートの品質は維持される
- 編集とは「どういうロジックで、どういうストーリー展開で説明すべきか」という、コミュニケーションそのものを考える仕事
- レポート制作の成功のため、プロジェクトチームに専門の編集者を迎え入れることを検討してみよう!
オレンジ社では、企業のIR/CSRレポート制作において企画・編集・デザインから印刷・多言語展開など、トータルサポートしています。
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